
住宅のまめ知識(コラム)
2024年09月09日
断熱性能の高い家の特徴と暮らしへの影響を考える〜断熱性能が大切な理由とは〜
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断熱性能の高い家の特徴と暮らしへの影響を考える〜断熱性能が大切な理由とは〜
断熱性能の高い家は「冬暖かく、夏は涼しい」という、過ごしやすい住環境を提供してくれます。
世界的にも住居の断熱性能の重要性は注目されており、実は日本ではまだまだその水準は低いと言われています。
今回は断熱性能の高い家の特徴や暮らしに与える影響について、またメリット・デメリットなどについてご紹介します。
断熱性能の高い家とは?
断熱性能が高い家とは「冬暖かく、夏は涼しい」とご紹介しました。
住宅において断熱性とは、屋外からの寒さや熱さの影響を受けにくい・室内と屋外の熱移動を極力防ぐことを指します。
日本では「断熱等性能等級」で、その性能基準を測ることができます。
断熱性能等級とは?
断熱性能等級とは、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)によって定められた省エネ性能を表す等級のことです。
2024年の現在は、2022年10月に定められた7段階で等級が定められています。
7段階の等級内容は以下の通りです。
◎等級1
昭和55年 省エネ基準未満のもの(無断熱)
◎等級2
昭和55年 省エネ基準と同等
◎等級3
平成4年 省エネ基準(新省エネ基準)と同等
◎等級4
平成28年 省エネ基準(次世代省エネ基準)と同等
※2022年施行の等級5が出るまでの最高等級
◎等級5
「ZEH(ゼッチ)水準」の断熱基準と同等
※ZEHとは省エネ基準のひとつで、太陽光発電や外皮の断熱利用の利用など、家庭内で生み出すエネルギーが生活で消費するエネルギーよりも上回る住宅を指します ※2022年4月施行
◎等級6
「平成28年 省エネ基準(新省エネ基準)」よりも、暖冷房にかかる一次エネルギー消費量を概ね30%削減できること
「HEAT20」G2と概ね同等
※HEAT20 G2とは断熱性能のグレードを表しており、冬期間の3地域から7地域(北海道を沖縄を除いた日本)で最低体感温度が概ね13度を下回らない性能 ※2022年4月施行
◎等級7
「平成28年 省エネ基準(新省エネ基準)」よりも、暖冷房にかかる一次エネルギー消費量を概ね40%削減できること
「HEAT20」G3と概ね同等
※HEAT20 G3とは断熱性能のグレードを表しており、冬期間の3地域から6地域(北海道・沖縄・四国・九州などを除いた本州)で最低体感温度が概ね15度を下回らない性能 ※2022年4月施行

断熱性と気密性の違いについて
「高断熱・高気密」とは、優良住宅でよく耳にする住宅性能の言葉だと思います。
断熱性と気密性、似ている様で違うこちらの2つの性能の違いについて、ご紹介します
先の項目で「断熱性とは文字通り”熱を断つこと”」とご案内しました。ここで言う熱とは”温度”のことです。
外の温度と室内の温度、これが行き来することで室内の温度変化をもたらします。
気密性も断熱性と同じように、文字に沿って紹介すると「空”気の密”度」と解釈することができ、断熱性は”温度”、気密性は”空気”に関する性能であるということになります。
断熱性が高いことで室内を保温し、気密性でその室内の温度を密閉し、一定の温度に保つことができるのです。
断熱性能の高い家を目指す場合、気密性についても考慮しなくてはならず、断熱性と気密性の両方が成り立つことではじめて、断熱性の高い家を実現することができるのです。
断熱性能の高い家にはどんなメリットがある?
断熱性が高い家にはどんなメリットがあるのでしょうか?ご紹介します。
メリットその1. 快適で健康的な暮らしができる
断熱性能の高い家はお家全体の温度を均一にしやすく、室内を移動してもあまり寒暖差を感じないのが特徴です。
冬期間に暖房が無い脱衣所やトイレが寒く、ご年配の方がヒートショックを起こす…という事故を耳にしたことがある方もいらっしゃるかと思いますが、断熱性能の高い家はこのような事故を予防することができます。
断熱性能が高い家のように室内が一定の温度であることで、傷病・症状の改善が見られるという調査結果もあります。
メリットその2. 省エネ効果で冷暖房費の節約に
「断熱」とは、文字通り熱を断つことです。
夏場は外部からの熱を、冬場は室内の熱をそれぞれ断つことで、夏は外の熱気を室内に入れず、冬は室内の熱を外に逃がさないようにしています。
そうすることで冷暖房の効きも良くなり、結果として、電気の使用量を抑え電気代節約となります。
メリット3. 補助金を受けられる可能性がある
優良住宅には行政から補助金を受けることができる制度がありますが、断熱性の高い家にも該当する補助金があります。
<断熱性能に関する補助金制度(2024年現在)>
■子育てエコーホーム支援事業
子育て世帯や若者夫婦世帯が省エネ性能を有する高性能な住宅の取得 (補助額)80〜100万円/戸※上限
■戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業
戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業 (補助額)住宅の省エネ化推進 55〜100万円/戸※上限
補助金を受けるためには、対象者や住宅条件など断熱性能以外の条件をクリアしなければなりませんが、断熱性能の等級をクリアしていることで優良住宅またはZEHの条件をクリアしていることがあります。
対象であれば、ぜひ補助金の交付を受けてくださいね。
【補足】断熱性能が高い家の快適で健康的な暮らしの調査内容について
国土交通省が提言しているスマートウェルネス住宅を推進している「スマートウェルネス住宅等推進調査委員会」の調査結果によると、住宅の室温と傷病には大きな関係性があることが分かりました。
● 住宅の断熱改修により血圧が低下
● 毎日の室温変化が大きい住宅では血圧の日変動が大きい
● 寒い・乾燥した寝室だと睡眠の質が低くなる
● 室温の上昇は夜間頻尿の改善を促す
● 居間が寒いと関節症・腰痛症になる可能性が高い
など。上記でご紹介した以外にも、断熱性能の高い家は様々な傷病の改善に繋がっているという調査結果があるのです。
※引用:2022年 スマートウェルネス住宅等推進調査委員会における「住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査」「住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査」よりより
断熱性能の高い家のデメリットとは?
快適な生活が送れる断熱性能の高い家は、ほぼ理想的な住宅のように見受けられますが、一方で生じるデメリットもあります。
断熱性能の高い家のデメリットについて、ご紹介します。
デメリット1. 空気がこもりやすい
気密性が高い断熱性能の家は、室内に匂いや空気がこもりやすいというデメリットがあります。
お家の空気の流れがカビや結露の原因になってしまったり、呼吸器系の病気に掛かりやすいなどの問題が生じてしまう可能性があります。
24時間換気システムの活用など、空気がこもらないようにするための対策が必要です。
デメリット2. 内部結露のリスク
内部結露とは、壁や床下・天井裏など、建物内の目に見えない部分で結露が発生してしまう状態を指します。
これは外と室内での温度差が生じた場合に発生する現象ですが、住宅にとって結露は建築材の腐食やカビやダニの原因になるなど、住宅寿命短縮の要因にもなります。
内部結露を防ぐために防湿シートを貼ったり、換気システムを使用するなどの対策を講じる必要があります。
デメリット3. 建築費用
断熱性能の高い家を建てるために、断熱性の高い建材や断熱材を用いる必要があるため、一般的な住宅と比べて建築費用が高くなってしまいます。
とは言え、断熱性能が高いことで冷暖房費の節約が望めむことができ、心身ともに快適な暮らしができるということを考慮すれば、長期間的に見ると大きなプラスであると見ることもできます。
初期費用が高くなってしまうことは懸念すべき部分ではありますが、長く住むことを考えて判断していただくと良いのではないでしょうか。
断熱性能を高めるには?
断熱性能を高めるには、いくつかのポイントがあります。注目すべきポイントについて、ご紹介します。
断熱性能を高めるポイント1. 高断熱窓の採用
室内と外部の熱の出入りについて、もっとも影響するのは窓です。
日本建材・住宅設備産業協会調べでは、夏は73%・冬は58%の熱の流入が窓を通じて行われているという調査結果が出ています。
高断熱の窓とは、枠やサッシを樹脂製・ガラスはトリプルガラスになっています。
断熱性能を高めるポイント2. 建材を高性能なものに
屋根・壁・床、基礎などの建材を、熱を逃がさない高性能なものを利用するようにします。
主に外気に触れる建材としてあげられるのはボードと塗料です。塗料は、性能が良ければボードの保護にも繋がりますし、塗り替え等で後から切り替えることも可能です。
塗り替えの際には塗料の断熱性能についても意識して選んでいただくと良いでしょう。
断熱性能を高めるポイント3. 断熱材を切れ目なく入れる
断熱性を高める最大のポイントでもある「断熱材」。この断熱材を切れ目なく、お家をすっぽりと包むように入れます。

現在の主な断熱材としては下記のようなものがあります。
● 無機繊維系
● 木質繊維系
● 発泡プラスチック系
断熱材それぞれの特徴ならびにコストとの兼ね合いを見ながら、ご検討いただければと思います。
断熱性能を高めるポイント4. 熱交換換気
断熱性能を高めるために隙間なく断熱材を配置し、建材も熱を逃がさないものを…とご案内しましたが、だからと言って風の流れないお家は匂いや湿気が籠ってしまう等、問題が生じてしまいます。
断熱性の高い家でも換気は不可欠ですが、室内の適温である空気をそのまま外に逃がしてしまうのはもったいないもの。
外気を室温に近付けてから室内に取り入れる「熱交換換気」を取り入れることで、冷暖房の負荷を軽減し快適な状態を維持することができます。
断熱性能から考える、人が求める快適な住まいとは…
断熱性の高い家がなぜ人にとって快適な住まいであるか。それは人が暑さや寒さを感じることに要因しています。
人も含め、物体そのものは熱を発しています。人間は35〜36度前後の体温を維持していますので、常にこれくらいの熱を周囲に発している状態であると言えます。また人間と同様に、他の物体も熱を発しています。
建物の壁や床、天井なども実は熱を発しているのです。この熱を発している状態を「放射」と呼びます。
熱は高いところから低いところへと発せられます。
例えば室内に人間がいて、壁や屋根が太陽の陽に照らされて人間の体温よりも高い40度くらいになったとします。そうすると、壁や屋根から人間に対して熱を発し、人間側は熱を受け取ることになり”暑い”と感じるのです。
反対に、壁や屋根の温度が風や雨に曝されて15度くらいに下がったとします。この場合、室内にいる人間の熱が屋根や壁に対して発せられ、人間は熱を奪われてしまうような状態になり、”寒い”と感じるのです。
壁や屋根などは外気に接することで温度変化が発生しますが、断熱性能の高い家は、この外気に接する部分の表面温度を一定に保つように建材や断熱材が施行されています。
私達人間が建物内で”熱い・寒い”という状態を感じないようにするためには一定の温度に保つ必要があります。断熱性能の高い家は、快適に過ごすことができるように施行されている家ということが言えるのです。
まとめ
断熱性能の高い家について、概要やメリット・デメリットなどについて、ご紹介しました。
憧れのマイホームを建てるなら、お家で快適に過ごしたいですよね。その為に”快・不快”と感じる要因はなるべく排除したいものです。
最近は、夏になれば歴代の最高気温を各地で更新し、冬になれば近年まれに見る積雪などの被害にあうことも多くなってきました。
せめてご自宅では快適に、そして安心して暮らしていきたいものですよね。ぜひ断熱性能の高いお家でステキなマイホーム生活を満喫していただきたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。