
住宅のまめ知識(コラム)
2024年10月28日
高台に建てる家の注意点と対策:地盤の強度や眺望を活かす設計のコツ、メリット・など
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高台に建てる家の注意点と対策:地盤の強度や眺望を活かす設計のコツ、メリット・など
最近では高台の物件が人気を集めているようです!
眺望が良いということもありますが、津波などの災害時のことを考えて、あえて高台を選んでお家を建てるご家庭も少なくありません。
見晴らしや風通しが良く、防災面でも心強い土地…となると、良いことばかりのように思えますが、やはり短所もあります。
今回は高台にお家を建てる場合のメリットならびにデメリット、さらに高台にお家を建てる際の設計のコツなどについてご紹介します。
高台に家を建てるメリットとは?
まずは高台にお家を建てる際に生じるメリットについて、ご紹介します。
防犯面や住環境面など、様々な面でメリットが多い高台住居。その具体的なメリットをご覧ください。
高台の土地メリット① 眺望の良さ

高台の最大のメリットとも言えるのが「眺望の良さ」です。
海沿いの街であれば、海を見渡すことができるかもしれません。
季節によっては、わざわざ会場まで出向かなくても、お家にいながら花火大会を見ることができる…なんて状況も考えられます。
視界が開けているという住環境は、開放的でリラックスした生活を送るにはとても適した環境であると言えるのではないでしょうか。
高台の土地メリット② 周囲からの視界を感じにくい
高台であるということは、四方に他住居があるという状態ではなく、敷地が斜面一角を担っていたり丘の上である状態が想像できます。
その場合、平坦な土地よりも近隣住戸と高低差ができるため、周囲の視線を感じることは少ないと言えるでしょう。
何気に気になる近隣住居からの視線ですが、高台住宅の場合にはそのような視線は極力感じずに過ごすことができるのではないでしょうか。
高台の土地メリット③ 日当たりや風通しが良い
高台にあるため周りを遮るものが少なく、通風や採光を遮るものがありません。
そのため、高台の家は風通しがよく日当たりも良いと言われています。
風通しや日当たりが良いということはお洗濯物の乾きも良く、健康的な生活を送ることができるでしょう。
また、標高の違いは気温にも関係します。標高が100m上がると、気温が約0.65℃下がると言われています。
全国的な気温上昇が言われていますので、比較的夏でも快適に過ごすことができるのも、高台住宅のメリットのひとつと言えるでしょう
高台の土地メリット④ 津波の影響を受けにくい
2011年3月に発生した東日本大震災で、日本中が津波の大きな脅威に驚き、悲しみ、そして心を痛めたことと思います。
地震大国と言われている日本ですので、家選びの際にも災害に対する点を重要視している人も少なくないことでしょう。
高台だから必ずしも安全…とはいい難いのですが、津波注意報が発生したら高台に逃げる…という災害時の行動は鉄則であるとも言えますので、津波に対する影響は受けにくいと言って良いでしょう。
高台の土地メリット⑤ 静かな住環境であることが多い
高台の場合、商業地区や幹線道路から離れた位置であることが多く、そのため、街のガヤガヤとした雑音や電車や車の騒音に悩まされることは少ないだろうと期待できます。
比較的自然を感じやすい環境であることが多いのも、高台のメリットと言えます。
高台に家を建てるデメリットとは?
続いてはデメリットについて、ご紹介します。
メリットとともにデメリットも把握することで、実際にお家を建てた際に「想像していた内容と違った」と思う場面も極力減らすことができるでしょう。
高台の土地デメリット① 移動の際に不便

高台の自宅に帰る際には、どうしても坂道を登らなくていけません。
徒歩や自転車での移動はなかなかの重労働…。年を追うごとに移動が大変と思う方もいらっしゃることでしょう。
例え車の移動であっても、平坦地と比較すると車の燃費が悪くなる傾向にあるため、ガソリン代が余分に必要になります。また、冬の時期には雪が降ったり、路面の凍結などで車の移動も困難になる地域もあることでしょう。
年齢を重ねると余計に移動の負担はより重く感じるかもしれません。
高台の土地デメリット② 崖崩れや土砂災害の危険性
高台の土地にお家を建てる際にもっとも心配な点が、こちらの「崖崩れや土砂災害の危険性」です。
高台は「急傾斜地崩壊危険区域」や「土砂災害警戒区域」「土砂災害特悦警戒区域」などの特別指定区域である可能性があります。
その地域のハザードマップなどを確認の上、特別指定区域であった場合にはあらかじめ避難場所や避難経路の確認をするなど、日頃から事前の対策を心掛けるようにしましょう。
高台の土地デメリット③ その土地の中心エリアから離れている
その地域の中心エリアには商業施設や病院、学校など生活に関係する施設が集中していると思います。
日々の生活の中で、必要に応じてそのような施設の利用も行うと思いますが、高台の場合にはそのような中心エリアから離れていることが多いのが現状です。
毎日の通勤や通学、またお買い物などに時間が掛かったり不便と感じることもあるかもしれません。時間的にも余裕を持った行動が必要になります。
高台の土地デメリット④ 費用が高くなる可能性が…
高台の場合、敷地内に高低差が生じていることが多く、そのような高低差がある土地は建築費用が高額になると言われています。
また、崖となっている土地では「擁壁(ようへき)工事」と呼ばれる、斜面の土砂が崩れないようにする工事が必要となります。
他にも、土をもって埋め立てる「盛土」や土地の強度を高める「地盤改良工事」なども必要となってくることが考えられます。
土地に関する建築費用以外にも、住宅に掛ける火災保険も高額になる可能性があります。
土砂災害に関する保証は基本的にはオプションであるため、このオプションを付与することで掛け金が一気に跳ね上がってしまいます。
このように、高台の土地は費用が高くなってしまう可能性が考えられるのです。
高台に家を建てる場合には地盤チェックが重要!
建物を建てる場合、その土地がどんな状態であるかチェックします。
その土地が軟弱地盤であった場合、「地盤改良工事」を行った上で建物を建てます。
この”土地がどんな状態であるかチェックする”ことを「地盤調査」と言います。
地盤調査は調べてみないと分からないことが多いため、費用に関しても見積もり段階では概算であることが多いのです。
ただし、地盤調査を行う前に分かる点もあります。それはその土地の「液状化」と「造成状況」です。
液状化は、各地域が発行しているハザードマップから液状化被害のなりやすさを調べることができます。このハザードマップを見ると、海や川といった水辺から離れている場所でも指定エリアに指定されていることがありますので、その様な土地も要注意です。
次に「造成状況」ですが、その土地に建物を建てるため土地を整えることを造成工事と呼びます。これはその土地の状態を見ることでどの様な工事が必要であるか判断することができます。
高台で必要になってくる造成工事
高台の地盤を活かすために行う工事として、主な方法に「切り土」と「盛り土」という作業があります。
<切り土・盛り土とは?>
● 切り土・・・元あった斜面を削って、平らな用地を造成する方法
● 盛り土・・・元あった地盤に土を埋めて(盛って)用地を造成する方法

切り土は、山のふもとのような高台の場所で用いられることが多い造形工事で、その場合、元々の地盤は硬質地盤と呼ばれる固く引き締まった地盤であることが多いのです。
硬質地盤は地震の揺れに強く、液状化のリスクも低いと言った特徴があります。
盛り土は、元々の地盤に土を入れて足し、圧力を掛けて崩れにくくした上に擁壁でその土を支えます。
元々の地盤が強固な硬質地盤だったとしても、土を足して壁で支えているという状況ですので、安全度で考えると切り土の方が安心であると言えるでしょう。
高台に家を建てる際のコツとは?!
高台に家を建てる際に生じるメリット・デメリット、ならびに地盤に関しての基礎的なお話をさせていただきました。
次に、高台に家を建てる場合に実際に気を付けていただきたいポイントをご紹介します。
高台に家を建てるコツ① 特別指定地域かどうかをチェックしよう
先にご紹介しました特別指定地域に指定されている場合には、土砂崩れやがけ崩れの危険性が考えられます。
その場合、自治体から建築に関する制限や条件が課せられている場合がありますので、事前にキチンと確認する必要があります。
場合によっては移転勧告を受けるケースもありますので、そのような必要性が生じることも念頭においておきましょう。
高台に家を建てるコツ② 盛り土の際には擁壁と転圧をチェックしよう
先に、高台の場合には地盤が「切り土」や「盛り土」で生計されることが多いとご紹介しました。
盛り土の場合、擁壁の強度だけではなく盛り土の圧力(転圧)のチェックもしていただくことをオススメします。
擁壁の強度は、各市町村の開発審査基準をクリアしているかどうかで確認することができます。
擁壁の高さが2m未満の場合にはこの審査基準を取得する必要がありませんが、擁壁築造の設計書から確認することができますので、説明を受けて確認するようにしましょう。
盛り土の圧力(転圧)とは、ローラーなどで締め固める作業のことを指しますが、この圧力を何cmごとにかけたのか確認することをオススメします。
細かい感覚で圧力を掛けるほど、盛り土は締め固められ強度が増します。盛り土がどれくらいの深さで何cmごとに転圧をかけたのかを確認することで、盛り土の強度を知ることができます。
高台に家を建てるコツ③ 強風対策を行う
高台にある家は風通しが良い…と、メリットの面でご紹介しました。
風通しが良いと言うことは、ダイレクトに風を受けると言うことになります。お天気が悪く強風の時などは、ダイレクトに風を受け、被害が生じることも考えられます。
強風に耐える構造として考えると、吹き抜けは避けたいところです。万が一吹き抜けを設けたとしても、空間としてはコンパクトな吹き抜けになるように設計しましょう。
また、シャッターを設けることも風対策として有効ですが、強い風のためにシャッターが飛んでしまった…という場合もありますので、注意が必要です。
高台に家を建てるコツ④ 眺望を意識する場合には外からの視線にも気を配る間取りを
「眺望が良い=リビングに大きな窓を設ける」という発想があるかと思います。カーテンを設けず、街の眺望を見下ろすようなロケーションはとてもステキですよね。
ですが、眺望を意識するあまり、道路から家の中が丸見え…という状態では、1日中カーテンを閉めたまま生活しなければいけないということになりかねません。
それでは、せっかくの高台のメリットを生かすことができませんよね。
例えば、大きな窓に面した箇所に跳ね出したテラスやバルコニーを設けるなど、視線を遮るものをワンクッション設けるのはいかがでしょうか。
眺望を活かしつつ、外部の視線からも安心して暮らせる間取りの工夫をオススメいたします。
まとめ
高台にお家を建てる場合のメリットならびにデメリット、注意点やコツについてご紹介しました。
高台のお家は、風や陽の光といった自然を感じつつ、リラックスした生活を送るには最適な場所と言えます。
突然の自然災害にも強い高台の家ですが、その分、注意すべき点をしっかりと把握し、設計に取り組んでいただければと思います。
ご家族の希望を実現する、ステキな高台の家を設計できますように、この記事がお役に立てたなら幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。